公益財団法人日本ボールルームダンス連盟

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学校学習とダンス

はじめに

平成15年度からの小学校体育科における「ボールルームダンス」
授業実践報告
京都市立朱雀第一小学校

本校は平成10年度より、研究の中心を体育科においてきた。平成15年度に、ボールルームダンスを取り入れての研究をし てみないか」との話があり、戸惑いもあったが、ボールルムダンス連盟の先生方や筑波大学の佐伯先生からのご指導も頂けるということ、さらに京都教育大学付 属京都中学校のご協力も頂けるということもあって、前向きに取り組んでいくことにした。
 さて「ボールルームダンス」の授業化の試みは6年生で行うことにした。この学年にしたのは、この6年生の子どもたちは、本校入学当初から体育研究の実践を積み上げてきた子どもたちであるということにあった。
 ただ6年生という思春期の入り口に立った子ども達は、異性を強く意識し始めている段階であるので、ボールルームダンスという「運動」をどのように楽しま せるのか、どのようなめあてを持たせ、どのようにしてめあてに向かわせるのか、なにより子ども達が「ボールルームダンスという語感からくるものにたいして 拒否感を抱くのではないか、そして指導者自信がダンスを知らないし踊ることもできない、ダンスをすることの気恥ずかしさなど様々な不安を持ってのスタート であった。


 そこでいろいろと考えた結果「ボールルームダンス」の出合わせ方を慎重にすること。男女が体を触れ合うことを自然な形 で行うことを大事にしようと考え、まず運動会の団体の演技(団体演技は組体操)で、その入場時に全員がタッチをして始める。演技する技はすべて男女が一緒 にするということにした。そして運動会のあとにボールルームダンスの授業をもってくることにした。つぎにボールルームダンスとの出会い。それは、我々がこ の授業をすることを早い時期から地域に知らせておくことから始めた。そして地域に住むダンスの愛好家(保護者でもある)にお願いして、本校職員・PTA会 員対象のダンス教室を開催した。このとき偶然にも6年生の女子が親と一緒に参加していた。結果的にはこの子どもが授業をひっぱる形となった。この子どもは 自然な形でボールルームダンスと出合った。それともう一人地域のダンス教室でヒップホップダンスを練習している男子がいた。この子どもにもかなり早い時期 から体育でボールルームダンスの授業をすることを伝えておいた。この子どもはそれを大変喜び、授業の日を楽しみに待っていた。この二人がまずボールルーム ダンスの授業を楽しみ、それを見ていた周りの子ども達も興味を持ち、「二人のように上手にダンスを踊りたい」と思うようになった。授業は我々が当初持って いた様々な不安は1時間目の授業からなくなった。むしろ授業が進むにつれて、6年生の子ども達が男女仲良く、本当に楽しくダンスを踊る姿を横で見ながら、 この授業に取り組んで良かったとつくづく思うようになった。子ども達はというと、授業を終了した後もまだ続けたいと言っていた。


 なおこの授業はここで終わらず、卒業を前にした3月。総合的な学習の取り組みの一環として、ダンスパーティーを開くこ ととした。このパーティーには保護者だけでなく地域の女性会や老人会の方々にも招待状を出し、当日はたくさんの方々に来て頂いた。その中にボールルームダ ンスの指導を頂いた保護者も、そしてヒップホップダンスを指導しているダンス教室の先生方も参加頂き、楽しいダンスパーティーとなった。


 この15年度でのボールルームダンスの授業化は、「ラテン・アメリカン・ダンス」(チャチャチャのリズム)で行った。 その結果としてラテンアメリカンダンスが持っている運動の特性、「パートナーと合わせたステップで軽快なラテンアメリカンのリズムにのって踊り、パート ナーと交流を楽しむ」
これを子ども達に十分に感じとらせる授業を、子どもの実態に合わせて教師がどう仕組んでいくかが大事だと考えた。


 16年度は、15年度に取り組んだ「ダンスパーティー」に参加していた当時の5年生は、6年生になって「ラテン・アメ リカン・ダンス」の授業を楽しみに待ち、学習を始める時点での力は、かなり高いものになっていた。引き続き地域指導員者の支援を受けながら、新しいステッ プも学習していった。この年度も1年間お世話になった人達を招待した「ダンスパーティー」を開いた。これには視覚障害者の方も参加いただいた。


 17年度は、「ラテン・アメリカン・ダンス」の授業を5・6年生で取り組むことにした。5年生はこの運動会に出会うの は全く初めてではあるが、兄弟姉妹関係からか比較的順調に授業に入っていた。この年度も6年生だけでなく5年生も「ダンスパーティー」を開き、保護者と楽 しくダンスする姿が見られた。


15年度は、「ボールルームダンス」という言葉に馴染みが薄く、指導者自身が社交ダンスにたいする偏見を持っていた。 しかしながら3年間の授業実践を積み上げる中で、「ボールルームダンス」は小学生が体育科で学習するには適切な運動であることを、この授業を指導した教師 は実感している。


  現代の今日的課題である「いじめ」「不登校」「人命軽視の暴力的行動」を『人と関わる力』の育ちによって解決できるのではないか、そしてそれを体育科で培 われる力によって解決できるのではないかとも考える。この「人と関わる力の育成は、生涯運動を楽しもうとする力の育成にも、また高度に成熟した社会を豊か に生きていく力にもなろうかと考える。「ラテン・アメリカン・ダンス」の運動性にある「パートナーとの交流を楽しむ」にはコミュニケーションが必要とな る。そして相手を思いやる気持ちが必要となる。ダンスを通じて、相手のよさに気づき、より深い人間関係を築くきっかけになっていくのではないかと考える。
  ボールルームダンス(ラテン・アメリカン・ダンス)の授業は、まさにこの「人との関わる力」をはぐくむものと捉えて、18年度も引き続き実践研究を行っていきたいと考える。

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